山本 喜久(やまもと よしひさ、1950年11月21日 - )は、日本の工学者である。
経歴
1973年(昭和48年)東京工業大学工学部電気工学科卒業。1978年(昭和53年)東京大学大学院工学系研究科博士課程(電子工学)にて工学博士を取得。日本電信電話公社武蔵野電気通信研究所(現NTT基礎研究所)を経て、1992年(平成4年)よりスタンフォード大学応用物理学科・電気工学科教授、2003年(平成15年)より国立情報学研究所教授を兼務。2019年(令和元年)に、NTT Research, Inc.が米国シリコンバレーに新たに開設したPhysics & Informatics Laboratories (PHI Lab)の所長に就任。スタンフォード大学名誉教授、国立情報学研究所名誉教授、NTT R&Dフェローの称号を持つ。
研究業績
専門分野は量子光学、量子情報科学であり、最近は量子―古典クロスオーバーを利用したコヒーレント・イジングマシンについて研究をしている。
NTT基礎研究所の研究員であった1980年代には、コヒーレント光ファイバー通信の提案と実証実験、光増幅中継の提案と実証実験、半導体レーザによる光子数スクイーズド状態の発生、光子数の量子非破壊測定の提案と実証実験、その他量子光学の基礎研究を行っている。主な成果は、光子数スクイーズド状態、量子非破壊測定、および光子を用いた量子コンピューターを実現する方法を提案・実証したことである。 1990年代には、半導体共振器量子電磁力学(特にマイクロキャビティと量子井戸を用いている)とメゾスコピックデバイスにおける量子輸送現象の研究を行い、その成果は広く知られている。
スタンフォード大学の応用物理学科・電気工学科の教授、および国立情報学研究所の教授であった1990年代・2000年代には、量子情報技術の基本概念(単一光子源や、スピン量子ビット)を実現する光活用の量子ドットの開発、および励起子ポラリトンの凝縮効果の提案と実証実験を行っている。また、量子鍵配送の安全性理論と量子鍵配送プロトコルの実現にも積極的に取り組んでいる。この時期の有名な論文としては、単一量子ドットからの識別できない光子の発生を証明した論文、単一量子ドットからの光子もつれ対を生成する方法として励起子分子カスケード発光を利用する方法を提案した論文(これは、文献に報告されているように、すべての量子ドットもつれ光子源の基礎となる提案である)、および光パルスを用いた単一量子ドットスピン制御に関する論文などがある。
2010年代、量子中継器を構築するための基本概念として量子ドットの研究を続けた。 ETHのAtaç İmamoğluのグループと同時期に、量子ドットスピンとそれによって放出された光子間のエンタングルメントを初めて証明したことは重要な成果である。励起子ポラリトンの研究をさらに続け、2012年からは、誤り耐性量子コンピューターにおける必要な物理量子ビット数と計算時間を予測し、縮退光パラメトリック発振器ネットワークの開発で誕生したコヒーレント・イジングマシンと呼ばれる新しい光量子コンピューターの研究開発の先駆者となっている。
主な受賞歴
- 1985年 電子情報通信学会業績賞『コヒーレント光通信に関する研究』
- 1992年 仁科賞『半導体レーザによる光スクイーズ状態の発生』
- 1992年 カール・ツァイス賞『半導体レーザによる光スクイーズ状態の発生』
- 2000年 IEEE/LEOS量子エレクトロニクス賞『励起子ポラリトンのボーズ・アインシュタイン凝縮』
- 2000年 松尾学術賞『光量子物理学の基礎的な研究』
- 2005年 紫綬褒章『単一光子数状態の発生』
- 2010年 MIT Hermann Anton Haus レクチャラー『教育と研究における卓越した功績』
- 2011年 大川賞『量子光学および量子情報処理分野における貢献』
- 2022年 ウィリス・ラム賞(Physics of Quantum Electronics)『コヒーレント・イジングマシンの研究開発』
他多数
外部リンク
- [Stanford https://yoshihisayamamoto.sites.stanford.edu/ 山本喜久]
- [NTT Research, Inc. https://ntt-research.com/phi/ 山本喜久]
脚註




