聖チェチリアと楽譜を持つ天使』(せいチェチリアとがくふをもつてんし、仏: 、英: )、または『ヴィオラを奏でる聖チェチリア』(ヴィオラをかなでるせいチェチリア、英: Saint Cecilia Playing the Viol)は、17世紀イタリア・バロック期のボローニャ派の画家のドメニキーノがキャンバス上に油彩で制作した絵画で、彼の作品中でよく知られているものである。1617年ごろに描かれ、画家成熟期の様式の成立を示している。本来、ルドヴィーコ・ルドヴィーシ枢機卿が所有していたが、フランスにもたらされた後にパリの銀行家エバーハルト・ジャバッハが1662年にフランス国王ルイ14世に売却した。1798年以来、パリのルーヴル美術館 (当時の名称は中央芸術博物館) に展示されている。

作品

本作に描かれているのは、音楽とオルガン演奏の守護聖女聖チェチリアである。3世紀の古代ローマ時代に生きた聖チェチリアは、神に身を捧げる若い女性であった。彼女は、ワレリアン (Valerian) と結婚した日に彼を真の信仰へと改宗させ、貞節な結婚へと導いた。伝説によると、2人はともに殉教した。後世、彼女には音楽に身を捧げたというイメージが加わり、絵画では中世に流行したオルガンとともに描かれることが多い。

本作の聖チェチリアは壮麗な赤いドレスを着て、ヴィオラ・ダ・ガンバで自ら演奏しながら歌っている。彼女はほとんど恍惚状態で、目が上を向き、プットが楽譜を開いて持っていることにも気をかける気配がない。ドメニキーノは古典主義的なバランス感覚に優れ、誇張的表現や過剰な写実を避けつつも、遊びのような細部を含む。この絵画では、譜面台の役割を担っているプットは、神話のアトラスのように頭で楽譜を支えている。絵画は全体に見事に調和がとれ、それが縦のモティーフが並ぶ構図によって強調されている。

脚注

参考文献

  • ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
  • 岡田温司監修『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』、ナツメ社、2011年刊行 ISBN 978-4-8163-5133-4

外部リンク

  • ルーヴル美術館絵画館公式サイト、ドメニキーノ『聖チェチリアと楽譜を持つ天使』 (フランス語)

”Kyrie” 「聖チェチーリア荘厳ミサ曲」より (作曲:シャルル・グノー Charles Gounod) YouTube

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